【経営者なら知っておきたい】資金調達方法あれこれ教えます

すでに事業を営んでいる経営者さまが、何らかの理由で資金を調達する必要にかられたとき、どのような方法が思い浮かぶでしょうか?「お金を借りる」「ものを売る」ことぐらいは思いつくけれど、そのほかはイマイチ思いつかない……そんな経営者さまも多いのではないでしょうか。

今回は資金調達方法の選択肢を基本的なものから飛び道具まで、特徴やメリット・デメリットと合わせてあれこれご紹介いたします。知識として知っているだけで、いざ資金がひつようになったときに「自社にとって最適な資金調達方法はなにか?」を考える手助けになります。

目次

解説・資金調達方法の3分類 

資金調達方法は大きく分けると以下のように3つに分類されます。

  1. 会社の持っている資産を、何らかの形でお金に変える
  2. 誰かからお金を借りて負債を増やす
  3. 会社に投資をしてもらうことで純資産を増やす

資産、負債、純資産は、決算書の貸借対照表の3要素と同じですね。

経営者さまが資金調達を考えたとき、真っ先に思いつくのは「銀行からお金を借りる」ことでしょうが、実は負債による資金調達以外にも色々な方法があり、方法によって一長一短があります。

それでは、ここから先はひとつひとつの調達方法を見ていきましょう。

資産を売る

資産の売却は仕組みがわかりやすいものからわかりづらいものまで様々です。なかには知らなければ現金化できると分からないようなものもあります。

共通しているのは、その資産は本当に売却しても大丈夫なものか?を判断しなければならない点です。

使っていない資産の売却

会社が保有しているさまざまな資産を売却することで資金調達を行う方法です。
売却できる会社の試算はある程度まとまった金額のものとなりますが、

  • 不動産
  • 自動車
  • 株券などの有価証券
  • 機械装置などの設備

などが代表的な売却できるものとなります。

少し変わったところで言えば、

  • 営業権
  • 商標権
  • 特許権

なども売却できる場合があるかも知れません。

メリット

  • わかりやすい資金調達方法である
  • 資産によっては思わぬ高い金額で売れる可能性がある

デメリット

  • 買い手を探すのが難しく時間がかかる場合がある
  • 希望金額で売れず売却損が出てしまう可能性がある

余剰になってしまった在庫の売却

会社に保管している在庫を売却することによって行う資金調達です。売れる見込みの高い適正な在庫であれば事業にとってプラスの効果がありますが、過剰な在庫は棚卸などに費やす管理コストや場所を占有するなどの保管コストが発生します。

利益が少ない割引販売をしなければならないケースもありますが、適正な在庫量を改めて見直す機会にもなりますので無駄な在庫の処分を検討してみましょう。

メリット

  • 管理コストや保管コストが同時に低減する

デメリット

  • 大幅な値引きなどを行わないと売れない場合もあり、売却損が出る可能性がある

売掛債権(売掛金)の売却

最近メジャーになりつつある資金調達の方法として売掛債権の売却「ファクタリング」というものがあります。

売掛債権は商品やサービスを納品・提供し、代金を代わりに支払ってもらう権利で、売掛金が支払われるまで、通常1~2か月程度のタイムラグが発生します。ファクタリングには2者間ファクタリング・3者間ファクタリングの2つの方法があり、手数料等や仕組みが異なるので理解と注意が必要です。

メリット

  • 売掛債権の回収期日到来前に売掛債権を現金化することができる
  • 売却した売掛債権の売却先が倒産しても返済義務がない

デメリット

  • 現金化に際し手数料がかかる
  • 売掛債権がすべて買い取ってもらえるわけではない

保険金の解約

法人で生命保険や医療保険に加入している会社は、保険金を活用して資金を調達することができます。特に経営者の生命保険活用は節税対策の一環として多くの企業に採用されてきました。保険契約を活用して以下のような調達が可能となります。

  • 解約して「解約返戻金」を受け取る
  • 解約せずに「契約貸付制度」を利用する

保険金の解約に際しては審査が発生しないので(内部留保の取り崩し)、他に動かすことのできるお金がない場合には検討に入ってきます。

メリット

  • 保険金の取り崩しには審査がないので確実な調達が可能

デメリット

  • 保険金を取り崩してしまう場合、解約返戻金が額面より少なくなってしまう可能性がある

リースバックの活用

営業上利用している設備や資産を売却する場合、気になるのは売ってしまっても事業が継続できるかどうかという点でしょう。

売却すると事業が成り立たない資産をそれでも現金化する場合、売却した後にそのままリース契約を結んで、リースとして使い続けるリースバックという方法が存在します

毎月の利用料金が発生しますが、売却した資金は一括で入ってくるので、まとまった金額の資金調達が可能となります。

メリット

  • まとまった金額が調達可能である

デメリット

  • リース契約による使用料を毎月支払う必要があり支払い負担が増加する

貸付金の回収

会社が役員やオーナーに対して貸し付けをしている役員貸付金を、会社に返済してもらうことで資金調達とする方法です。

経営者の役員貸付金や仮払金が決算書上に残っている状況は、金融機関の融資の評価に響いてしまいます。銀行から見れば、「貸したお金が経営者個人へ回ってしまう」と考えられるためです。

銀行や金融機関の評価を高めるためにも、役員貸付金や仮払金解消には早期に取り組みましょう。

メリット

  • 銀行や金融機関からの評価が良くなる

デメリット

  • 返還に際しては役員の経済状態に依存する

負債を増やす

他人のお金である負債を増やす資金調達方法です。

負債は共通して他人の資本ですから、いずれは返さなければならないのが共通の特徴です。

公的な融資の利用

公的な融資制度を活用してお金を借りる資金調達方法です。

金利の優遇を受けられたり、審査に通りやすかったりするのが公的な融資になります。

都道府県、区市町村などが独自の融資制度を持っており、政府系金融機関である日本政策金融公庫や商工中金なども様々な資金用途に応えるシステムを持っています。

メリット

  • 通常の融資より金利・審査などの面で有利な場合がある

デメリット

  • やや審査に時間がかかる場合が多く、クイックな資金調達には不向き

銀行融資の利用

一般的に言って、もっともメジャーな資金調達方法と言えます。

銀行融資には信用保証協会が保証する「保証付き融資」と銀行が独自で融資する「プロパー融資」の2種類が存在します。

プロパー融資ではある程度の信用力がなければ融資を受けられませんが、信用保証協会の保証付き融資が受けられれば、信用力を補うことができるでしょう。(別途の審査や保証料が発生します)

メリット

  • 非常にメジャーな資金調達法であり、計画的に借入・返済することで企業の信用力を強化できる。
  • 業績と信用に応じて借入額の増加が見込める。

デメリット

  • 信用力が低い状態では融資を断られる可能性があること

ビジネスローンの利用

ノンバンクなどが提供しているビジネスローンのサービスを利用する資金調達です。ビジネスローンは、事業性のある使途を目的にしたローンで主に個人事業主や中小企業向けの無担保融資になります。

銀行などの信用保証付きの融資が通らない場合などで信用力が低い中小企業・零細企業が運転資金の資金繰りなどのために一時的な借り入れを行うための利用されます。一般的に「無担保」で「第三者保証人不要」で利用ができるものが多いです。

ノンバンクのビジネスローンは審査が甘く、着金までの期間が短い特徴がありますが、その分金利が高く設定されているので、金利負担が高くなり、恒常的な利用には適しません。またノンバンクの利用は信用情報を傷つける恐れもあるため、利用しない、または一時的なつなぎ融資としての資金繰りのためにだけ使うようにしましょう。

メリット

  • 無担保無保証人で融資が可能
  • 着金までの期間が短い
    • スピーディーに審査が完了するので、最短だと即日の融資となります。
  • 審査が甘い

デメリット

  • 高金利である
    • 銀行のビジネスローンの金利は約3%~となっていますが、ビジネスローンの金利の目安は約5~18%となってる。金利が高いので日常的に利用していると、経営を圧迫してしまう
  • 融資上限額が低い
    • 公的融資や銀行融資では、業績や保証によっては数千万円以上の借り入れも可能ですが、ビジネスローンの融資上限額は500〜1000万円程度です。
  • 返済期間が短い
  • 信用情報の低下につながる
    • 多数のノンバンクから借入を日常的に行っていると、信用情報が低下する恐れがある。

手形の割引

受け取った手形を銀行に売却する「手形割引」による資金調達です。
最近は減少してきていますが大企業との取引や建設業などの特定業界では、「約束手形」による支払いが残っている場合があります。

手形は売掛債権よりも回収までの期間が長くなってしまう傾向があり(半年以上の場合も)なかなか資金化できないことが悩みのタネとなります。

そこで手形を銀行に売却する手形割引という仕組みがあるのです。

資産売却の項で説明したファクタリングとの違いは、手形割引で銀行に譲渡した手形が不渡りした場合には、手形を買い戻す義務が発生することです。そのため、手形割引は「融資」「貸付」の一種として分類されるのです。

メリット

  • 手形の支払期日以前に現金化することができる

デメリット

  • 支払期日に応じた割引手数料が発生する
  • 手形発行企業が倒産した場合のリスクがある

大型受注の前受金の受取

商品やサービスの代金をを前払いによって受け取る仕組みとすることで、資金が調達可能となります。

サービスを提供する義務が残るので、負債としてカウントされるのが一般的ですが、資金繰りが大きく改善することになるでしょう。

メリット

  • 代金を先に受け取れるので資金繰りが大きく改善する

デメリット

  • 業種業態によっては導入が難しい場合がある

リスケジュール

債務の返済が苦しくなった場合に銀行と相談して、返済計画を見直すカタチでの資金調達です。(厳密にいうと、支払う金額を減らす選択肢となります)

交渉がまとまってリスケジュール成功となれば返済額の減額を受けたり、据置期間を導入して一時的に返済がストップするなどが可能です。

ただし、リスケジュール中には新たな借り入れを行うことが難しくなったり、銀行を納得させるための資料や銀行に業績を都度を用意するなどの業務負担が発生します。

確実な返済計画を示せなければ、債権者は交渉に応じてくれないでしょう。

メリット

  • 返済額の減額や据置期間の導入により支払い金額が少なくなる

デメリット

  • リスケジュールに入ってしまうと企業の信用力はかなり低下する
  • 銀行と交渉や連絡を密に取らなければならず、業務負担が増加する

私募債の発行

社債を利用した資金調達です。

大企業はときおり社債を発行しますが、中小企業が大きなコストをかけて社債を公募するのは現実的ではないので、「少人数私募債」を利用した資金調達となります。

少人数私募債は、49人以下の投資家に対して発行することができる社債のことで、引受人についても会社の関係者に限定されています。

少人数私募債も、社債の一種ですから、投資家には利息というメリットがあります。

投資家を募るためには高めの利率設定が必要になります。

メリット

  • 中小企業が実質的に行える数少ない直接金融

デメリット

  • 利息が高くなる傾向にある

純資産を増やす

純資産を増やす資金調達の最大の特徴は、「返さなくてよい」という点につきます。

ただし経営権の一部を渡すことになり企業運営に口を出されてしまったり、配当金などのリターンを約束しなければならないなど、必ずしも安易な方法とは言えません。

また、純資産が増資した場合には企業の安全性が向上し、信用力が増加する効果もあります。

第三者割当増資

既存の株主以外の第三者を対象に新株を発行することで増資を行う資金調達方法です。

新株を発行し、その売ったお金が資金となります。

第三者割当増資を行うためには、投資家に事業の成長性を示し、将来株価が上昇するというリターンを説明して納得してもらうことが重要となります。

メリット

  • 返済不要な資金が得られる。
  • 場合によっては投資家による事業への協力が得られる場合もある

デメリット

  • 既存株主の出資比率が低下する。経営者自身が出資している場合は会社支配力が弱まります。

ベンチャーキャピタルからの出資

ベンチャーキャピタルから出資を受ける資金調達です。

ベンチャーキャピタルとはベンチャー企業に対して投資を行い、その企業が上場した場合に出資資金を回収し利益を上げるビジネスを行っている投資専門会社です。

ベンチャーキャピタルは将来性の高い市場・企業に対して投資を行いますが、将来性が見込めなくなった場合、資金を引き上げられる(割り当て株買い取りの請求を受ける)可能性もあります。

また、一般的にベンチャーキャピタルは上場までの期間として求めるスピードが速いので、経営計画やビジョンの策定などがしっかりしていなければ出資は得られないでしょう。

メリット

  • 一般的に出資金額が大きく、スピーディな成長が可能となる

デメリット

  • 勝算と成長性の高いビジネスモデルを提示しなければならない
  • 経営に口を出される部分が大きく、戦略が制約を受ける場合がある

エンジェル投資家からの出資

あまり日本では馴染みのない資金調達ですが、個人投資家による出資を受けるかたちの資金調達です。

ベンチャー企業投資について税制優遇が得られる制度も創設されたことから、今後増加してくる出資となるかも知れません。

もちろん、投資対象として投資家に魅力あるリターンを提供する必要があります

メリット

  • 返済不要な資金が得られる
  • 場合によっては投資家による事業への協力が得られる場合もある

デメリット

  • 経営に口を出されることがある

新株予約権の発行

「新株予約権(ストックオプション)」の発行による資金調達です。

実際にはIT系ベンチャー企業などで人材を確保する時に使われるシステムの場合が多いですが、金融機関からの借り入れや社債の発行時にストックオプションを利用することで、融資条件を緩和するなどの効果があります。

新株予約権(ストックオプション)とは、あらかじめ設定した価格で新株を購入できる権利のことで、株価が今後成長していくことをメリットに資金を調達します。

株価が安いときに予約権を持っていれば会社が成長して上場した場合に売却することで、リターンを得られる仕組みです。

メリット

  • 社員にストックオプションを配布する場合、がんばりと業績が連動し、モチベーションが向上する効果が得られる

デメリット

  • 社員にストックオプションを配布する場合、業績が悪くなるとモチベーションが低下する

クラウドファンディングでの資金調達

クラウドファンディングは昨今急速に認知を高めている資金調達法で、インターネット上で

直接個人投資家から出資を募る仕組みとなっています。

一口数万円から出資ができるのが特徴で、インターネット上で簡単に不特定多数から出資を受けられることからクラウドと呼ばれています。

日本ではまだ商品企画型のクラウドファンディングが多くなっていますが、不動産投資などのクラウド化なども進んできており、中小企業の資金調達法としても今後成長していくのではないかと予想されています。

メリット

  • 中小企業であっても広く少額の出資を募ることが可能である

デメリット

  • クラウドファンディングの募集にかかる負担が大きい
  • 現状では事業そのものへの投資というよりは商品企画に対する投資が多い

補助金・助成金の活用

国や地方公共団体が政策として中小企業でも使える補助金・助成金を設定しています。

これらは返済不要のものなので、純資産の増加としてカウントしています。

制度を知っており、活用することができれば直接現金によるサポートが得られるので、資金繰りはかなり改善するでしょう。

ただし、場合によっては優秀な企画から採択されてゆく競争型のものもあり、確実な資金調達方法としては難しさがあるのが現実でしょう。

メリット

  • 返済不能の資金が得られる

デメリット

  • コンペ形式で採用されなければ補助されないようなものもあり確実性が低い
  • 受取は補助金の事業が完了して報告を済ませてからとなり、場合によっては資金を受け取るまでに年単位の時間がかかるものもあり、スピード感がない
  • 基本的に費用先払いの形式となるので、一時的なキャッシュアウトを覚悟する必要がある

まとめ

代表的な資金調達方法について、メリット・デメリットを含め、ご紹介いたしました。さまざまな資金調達法があることを知り、あなたの会社に合った資金調達法を見つけ出すためにご活用いただければ幸いです。