【IT化成功の秘訣】RFP作成につながる要求定義の必要性

デジタル・トランスフォーメーション

システム開発を他社に依頼する場合において、委託先に対してRFPを発行して、システム開発の提案を受け、委託先を選定するのが一般的です。RFPを作成するには、あらかじめ自社のシステム化に対する要求を整理しておく必要があります。この整理する作業工程を「要求定義」と呼んでいます。RFPの作成の前提となる要求定義について説明するとともにRFPの作成方法や目次などをご紹介します。

要求定義とは

「要求」とはビジネス上の課題を解決に向けて、システムの利活用により実現させたい「事業者や利用者の「~したい」といった希望や要望」を整理したものです。要求定義は、システム化の要求を整理する作業工程です。そして要求定義工程の主要な成果物がRFPとなります。

要求定義で整理すべき要求とは

要求定義で整理すべき要求は以下の5つとなります(技術要求を機能要求と非機能要求に分割)

ビジネス上の目的や課題・ゴールから達成すべき手段としてのITの活用までを、整合性をとりながら具体的に落とし込んでいきます。

要求の種類

業務要求(ビジネス要求)

業務要求では、システム化に至った背景やビジネスの目的や課題、達成すべきゴール、期待する効果を整理します。一言でいうと、システムに求めるビジネス要求です。

最初に業務モデルやビジネスモデル図といったシステム化のスコープの前提となるビジネス全体を把握できる資料を作成する必要があります。またあわせて、ビジネスを遂行するための業務プロセスとして業務フローを作成する必要があります。この時点の業務フローは、「業務」または「処理機能」単位で業務の流れがわかるもので問題ありません。

  • ビジネスモデル図・業務モデル
  • 業務フロー
  • システム全体図
  • 利用者・利用環境
  • 予算
  • ビジネス・スケジュール

技術要求(システム化要求)

技術要求は、システム化したい要求です。システム化要求は「機能要求」と「非機能要求」とに分けて整理します。整理した要求は「システム化要求一覧」としてまとめます。

機能要求

機能要求は、ユーザーがシステムに求める機能(処理の振る舞い)に関する要求です。画面や帳票やバッチ処理(自動更新処理)などが対象となります。機能要求で最も重要となるのが要求の優先度をつけることです。要求に対してMUST(必ず)とWANT(できたら)を明確にする必要があります。一般的には「高・中・低」などの優先度を付記して、システム化要求の優先度を表現することが多いです。

非機能要求

非機能要求は、ユーザーが機能要求以外に求める要求です。具体的にはシステムの稼働率やシステム性能、セキュリティ、保守サービスなどです。独立行政法人情報処理推進機構 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター(以下、IPA/SEC)が「非機能要求グレード2018」として非機能要求事項として体系化されていますので、上記の資料を参照に必要な要求事項を整理するのが望ましいです。

移行要求

現行システムや業務データが存在する場合のデータ移行やシステム移行に関する要求です。

業務データがすでに存在する場合は、データの移行方針や移行方法を整理します。また、現行システムからシステムを切り替える場合は、切替時期やネットワークやシステムの切替方法を整理します。必要に応じて並行稼動の実施有無も要求として整理します。業務移行ではチェンジマネジメントやユーザー教育の実施といった業務切替に関する要求を整理します。

  • データ移行
  • システム移行
  • 並行稼動
  • 業務移行

運用要求

システム運用にかかわる要求事項です。ユーザーが利用するシステムの利用時間やシステム運用後の維持費用や保守作業に関わる要求です。

要求定義と要件定義の違いについて

要求定義は上述のとおりですが、要件定義は、ユーザーのシステム化要求に対して、要求を具体化・整理し、システム化することを合意し、要件としてを定義する作業工程を言います。「要求」を精査して、システムの「要件」として落とし込んでいく過程となります。ですので、実施する作業項目は、要求定義と要件定義では類似していますが、要求定義が要件定義の上流工程の作業となります。

RFPとは

RFPは、委託先に対して「システムで実現したいこと」を要求として記載し、要求に対する提案書の提出を依頼する文書です。RFPは委託候補先に対して「何をいつまでにいくらで作りたいのか」を示した文書でもあります。ちなみにRFPは「Request for Proposal」の英語の略です。

RFPの重要性

RFPにおいて最も重要なことは、正確かつ詳細に自社の要求をしっかりと文書化することになります。RFPの記載内容が不十分だと、自社にとって適切な提案を受けることができません。また、要求を明文化することで、委託先との「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。

RFPに記載する内容は?

RFPに記載する内容は、要求定義で整理した内容がすべてです。その上で、提案にあたっての契約事項や選定プロセスなどを付記していきます。

  • 業務要求
  • 技術要求(システム化要求)
    • 機能要求
    • 非機能要求
  • 移行要求
  • 運用要求

RFPの目次例

RFPの記載方法にルールはありません。目次構成は会社ごとに異なりますが、記載内容は、おおむね「業務要求」、「技術要求」、「移行要求」、「運用要求」、「提案依頼事項」、「契約事項」の5つとなります。

  1. プロジェクト概要(業務要求)
  • 会社概要・事業概要
  • 背景
  • 目的
  • ゴール
  • 業務概要・ビジネスモデル
    • 業務の流れ
    • 概念モデル
  • システム全体図
  • 利用者・利用環境
  • スケジュール
  1. システム化要求
  • 機能要求
    • 機能要求一覧
  • 非機能要求
    • 非機能要求一覧
  1. 移行要求
  2. 運用要求
  3. 提案依頼事項
    • 要求に対する実現内容
    • 納期およびスケジュール
    • 納品成果物
    • プロジェクト管理
    • プロジェクト体制(開発体制)
    • 作業場所・開発環境
    • 費用負担
    • システムアーキテクチャ・開発言語
  4. 提案依頼手続き
    • 提案依頼スケジュール
    • 提案書の提出時期・提出方法
    • プレゼンテーション
    • 評価
    • 問い合わせ先
  5. 契約事項
    • 発注形態
    • 検収条件
    • 支払条件
    • 機密保持契約
    • 著作権等
    • 保証年数(瑕疵担保賠償責任期間)

RFPとRFIの違い

RFIとは、情報提供を依頼する文書です。「Request For Information」の英語の略です。

システム化を要求を整理・検討する上で、必要な情報を委託先候補から入手する行為となります。また市場のITトレンドから課題解決のためのソリューション事例などを収集します。

RFPとの違いですが、RFIはRFP作成のためのインプット情報となります。通常、RFIに対する回答は、製品やサービスの紹介資料や導入事例集などの情報提供が一般的となります。中には積極的に営業提案や製品デモの実施などを行ってくれるベンダもいます。そのため、RFPを発行する際の候補先選定の一次フィルター(選別)となることが多いです。

まとめ

RFPの作成をより効率的に進めるには、事前に「要求定義」を行うことがベストです。特に「業務要求(ビジネス要求)」から「技術要求(システム化要求」への落とし込みが重要となってきます。ビジネス課題に対して「どの範囲をシステム化」すべきかをコストと納期と解決手段の組み合わせで「全体最適」で整理することがよいRFPを作成するためのポイントとなります。

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